近赤外光免疫療法とは、
抗体 – 光吸収体を用いる
新たな腫瘍の治療方法です。
近赤外光免疫療法が
がん治療として効果・
特異性が高いことは
これまでにも報道されています。
では
光免疫療法の効果は、
他の療法と併用すると
どうなるのでしょうか?
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光免疫療法との併用
これまでに
抗ガン剤、
チェックポイント阻害剤、
放射線治療との併用による
相乗効果を紹介してきました。
いずれの報告も
「2017年」もしくは「2016年」の論文です。
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つまり
日進月歩で
がん治療方法の技術が
進んでいる証拠です。
特に
「ガン免疫療法」の進歩はすごい。
もう
「ガン免疫療法は胡散臭い」という
数年前のイメージはなくなってきました。
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また一つ光免疫療法との併用療法が加わった
数週間ぶりに
新しい近赤外光免疫療法に
関する論文が出ました。
(2017年12月13日)
Molecularly Targeted Cancer Combination Therapy with
Near Infrared Photoimmunotherapy
and Near Infrared Photo-release with
Duocarmycin-antibody Conjugate.
Mol Cancer Ther. 2017
pii: molcanther.0851.2017.
doi: 10.1158/1535-7163.
小林久隆主任研究員を
ラストオーサーとした
日本人がメインの論文です。
筆頭著者も日本人ですが、
この研究自体は日本ではなく
アメリカの国立がんセンターで
行われています。
皆さん
光免疫療法の技術を学ぶために
アメリカで修行しているわけです。
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おおまかな内容
光吸収体が
ガン特異的にくっつくように
これまでにも利用されてきた
「パニツムマブ抗体」を利用しています。
今回の論文では
もうひとつ
デュオカルマイシンという
抗がん作用をもつ低分子化合物を
この抗体にくっつけて使っています。
以下、CyEt-Pan-Duoと 略します。
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これまで光免疫療法で用いてきた「光吸収体」と
この低分子化合物CyEt-Pan-Duoで
二重にガン細胞をたたくというわけです。
結論だけ
知りたい方は「まとめ」にとんでください。
光免疫療法を
少し詳しく知っておきたい方は
約2分程度 お付き合いください。
がん治療法の「現状」が見えてきます。
一緒に「がん治療法」を勉強していくことで
自分で納得したがん治療法を選べるようになります。
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パニツムマブ
パニツムマブの簡単な説明は以下です。
パニツムマブ(Panitumumab)は、
ヒト上皮増殖因子受容体 (epidermanl growth factor receptor; EGFR) を
標的とする完全ヒト型IgG2モノクローナル抗体(分子標的薬)である。
商品名はベクティビックス点滴静注(開発アムジェン・販売武田薬品工業)。
2009年12月現在、
34ヵ国で承認されているが、
2010年4月 日本における適応は
EGFR陽性で
「KRAS遺伝子野生型の治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸癌」である。
Wikipediaより引用
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デュオカルマイシン
デュオカルマイシンの簡単な説明は以下です。
デュオカルマイシン(duocarmycin)類は、
1988年にストレプトマイセス属微生物から
初めて単離された天然物の一群である。
デュオカルマイシンには
強力な抗腫瘍作用が見出されている。
Dale L. Bogerらの研究によって、
ファーマコフォアと作用機序が推定された。
デュオカルマイシン類は
DNAの副溝 (minor groove) に結合し、
核酸塩基アデニンのN3位をアルキル化する。
Wikipediaより引用
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ヘプタメチンシアニン
CyEt-Pan-Duoのうちの
CyEtはヘプタメチンシアニンです。
近赤外線吸収シアニン色素の一つです。
近赤外線光が当たると
標的の近くで生物活性分子を
放出するように開発されています。
いまいち
その原理が良くわからないのです。
光が当たると
タンパク質の立体構造が変わる。
そして
移動するのでしょうか?
だれか教えて下さい。
<(_ _)>
ちなみに
富士フィルムが、
1999年に
「ヘプタメチンシアニン化合物、
近赤外線吸収インク、
近赤外線吸収シートおよびハロゲン化銀写真材料」という内容で
特許を取っています。
2000年には国際特許(6072059号)としました。
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バックグランドの説明が
長くなりました。
この背景がわからないと
論文の意義がわからないため、
長々と説明した次第です。
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研究内容
この光免疫療法の論文では
光吸収体panitumumab-IR700(pan-IR700)と
近赤外線光吸収・放出化合物
CyEt-Panitumumab-Duocarmycin(CyEt-Pan-Duo)を
用いた組み合わせを検討しました。
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結果
結果として
pan-IR700および
CyEt-Pan-Duoの両方が、
in vitro(培養細胞を用いた実験系)で
EGFR発現MDAMB468細胞株に
特異的な結合を示しました。
ネズミを使った実験では、
近赤外線光照射後に
CyEt-Pan-Duoを注入すると、
腫瘍に高度に蓄積する像が得られました。
さらに
光免疫療法とCyEt-Pan-Duoの
併用療法の効果を評価するために、
「担のうガンマウス」を作製し、
4つの群に分け比較しました。
(1)対照;
(2)光免疫療法(pan-IR700)
(3)CyEt-Pan-Duo
(4)光免疫療法とCyEt-Pan-Duoの組み合わせ
対照群と比較して
2)3)4)すべての処置群において
腫瘍増殖が有意に阻害されました。
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また
有意に生存が延長されました。
特に効果が高かった治療法は、
光免疫療法とCyEt-Pan-Duoの組み合わせでした。
今回の実験結果にもとづくと、
光免疫療法とCyEt-Pan-Duoの組み合わせは、
それぞれ単独の治療法に比べて、
治療効果を増強できることがわかりました。
まとめ
今回の研究では、
いつくか物質がでてきて、
私は混乱しました。
(◎_◎;)?
簡単にまとめると
光免疫療法は
これまで試した併用療法
と相性が良いということです。
つまり
光免疫療法と抗ガン剤、
光免疫療法とチェックポイント阻害剤、
光免疫療法と放射線治療と
同時に使えるということです。
さらに
今回
次世代の抗がん作用を持つ
CyEt-Pan-Duoとも
相性がよいことがわかりました。
これまでのがん治療(きる、のむ、あびる)に加えて
「光免疫療法単独」もしくは
「光免疫療法と併用療法」が
将来選択できるようになります。
どちらも
静脈に注入して
光を一瞬ピカッとうけるだけなので
負担はほとんどなし。
また
きる、のむ、あびるにくらべて
費用も低く抑えることができます。
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今日も最後まで読んで頂き
ありがとうございました。
みそしる一押しお願いします。
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